5人のジュエリーアーティストがやんばるを歩き、そこで出会った素材をモチーフにジュエリーを作る「モーアシビーやんばるジュエリー」シリーズ。
前回のインスピレーションツアー第1弾レポートに続き、今回は第2弾レポートをお送りします。
ツアー第2弾に参加したのは、「YURI MIYATA」の宮田有理さん、「Selieu(セリュ)」の田口朋子さん。
お2人とも主に自然をモチーフに制作するスタイルで、ふだんから植物との出会いを大切にしているのだとか。というわけで、今回のやんばるツアーはどんな出会いがあるのかワクワクドキドキ。とても楽しみにしていたそうです。
まずは、やんばるの本部町にある「沖縄美ら島財団」で座学。
第1弾と同じく野生植物のスペシャリスト、阿部篤志さんのお話を聞きました。
宮田さん、田口さん、プロジェクターに映し出される植物に興味津々。
「お2人はよく植物をモチーフにされるんですよね!」と阿部さんも嬉しそう。
続いては、サンゴ礁生態学が専門分野の山本広美さんによる海藻のお話。
その昔、海藻の粉が地上に現れ、二酸化炭素を酸素に変える光合成をしてくれたおかげで、地球に酸素がたくさんできた。私たちは、海藻のおかげで息ができている。
最初に、海藻が持つ大切な役割を教えてくれました。
机には、海藻の標本や写真集もたくさん。絵に描いたような繊細な線のアーティスティックな海藻の姿に、惚れ惚れ。「この形でピアス作ったら素敵ですよね! でも、みんなが海藻だってわかってくれなかったら悔しい。きっと『鳥の羽根でしょ』なんて言われちゃう(笑)」と山本さん。海藻への大きな愛を感じます。
「海藻はどの種類も食べられるんですか?」「海藻には寿命があるんですか?」次々と飛び出す質問に、おもしろおかしく、わかりやすく解説。「へぇええ!」の連続で楽しく学べる時間となりました。
2日目は、野生植物のことなら何を聞いても答えてくれる阿部篤志さんの案内で、やんばるの森へ。
もちろん、絶滅危惧種の植物も見ることができました。阿部さんはなんでも知っている……。
シダやツタに興味があるという田口さん、宮田さんのために、葉の形や細かい模様などを、ていねいに解説してくれます。
雨上がりの「やんばる国立公園」では、セミや鳥の鳴き声を聞きながら、緑に抱かれ深呼吸。
「これ、すごくきれい!」と、宮田さんが見つけたのは葉の裏にくっきりと現れた胞子。阿部さんが持っていたルーペでまじまじと鑑賞。まるで誰かが描いた絵のよう。自然の神秘を感じます。
そして、第1弾ツアーのときと同じく「皆さんに見せたい植物がある」と言って山へと案内してくれる阿部さん。
今回はちゃんと登山コースが整備されている「くがに岳」です。とはいえ、長い長い上り坂がきつい。
道中、植物の説明を挟みながら、やっとのこと登りきると、「うわー!」感激の一声。四方に望む、やんばるの山々。靄がかかり、なんとも幻想的です。
下山した後は、県指定天然記念物のサキシマスオウノキが見られる国頭村安波へ。推定樹齢200年。曲がりくねった板のような根が神秘的。そこで何かを訴えかけているような、圧倒的な存在感がありました。
「これ、何かに似ていませんか?」と阿部さんが拾ってきたのは、サキシマスオウノキの実。よーく見てみると、ウルトラマン!? 「当たり!」 一説によると、なんとこの実がウルトラマンのモデルになっているそうです。近くには夜になると咲くサガリバナも。ちょうど夕方、花を開き始めたころ。独特のいい香りが漂っていました。
ラストは、慶佐次のマングローブ(ヒルギ林)へ。輝く水面とヒルギの根のシルエット。陽が沈みゆく時間の美しい景色を堪能しました。
最終日は、サンゴに詳しい「沖縄美ら島財団」の野中正法さんと海洋博公園で待ち合わせ。「沖縄美ら海水族館」を一緒に周りながら、沖縄の海に棲む生物の基礎的なことから、マニアックな話までたっぷりと。サンゴの赤ちゃんも見られて、貴重な体験ばかり。
そしてあの宮殿のような異空間「熱帯ドリームセンター」へ。散策中、田口さんは壁にくっついていたかわいいツタ植物に興味津々。アーティストごとにそれぞれ異なるアンテナ、異なる視点が楽しいですね。
あふれるアイデアと、実際に手を動かしたときの感覚と。「このツアーで得た刺激を持ち帰って、作品にどう落とし込んでいけるか楽しみ」。お2人とも想像と期待を膨らませながら、笑顔のツアー終了となりました。
次回は、いよいよ完成作品の発表です!
PHOTO&TEXT/Norie Okabe