第2部 ワークショップ「もうひとりの自分を描いてみよう!」
第1部トークショー後は、場所をTERMINAL OkinawaCreativeSpaceに移して第2部ワークショップを開催。
テーマは「もうひとりの自分を描いてみよう!」
放送作家のキャンヒロユキさんと美容師の前泊憲作さんが、それぞれ違うワークショップを行い、「もうひとりの自分」の創り方を教えてくれるというもの。自分を表現することの新しい方法を学んでみようという現場です。
はじめに行われたのは、「キャンヒロユキ編」ワークショップ。プロの芸人による漫才を教材に、お笑いの本質に迫ることで「セルフプロデュース」を参加者に提案するという内容です。
まずは、この企画のために駆け付けてくれたお笑い芸人「すっとこどっこい」の2人によるライブからスタート。約1分半のショートコントを披露し、会場をどっと盛り上げてくれました。
参加者としては、ただただ笑っていただけですが、実は「笑いにはさまざまな種類がある」ということをキャンさんがレクチャー。たとえば「言葉遊びの笑い」。ダジャレやなぞかけなどがそれに当たるそう。
さらに漫才には、①つかみ、②コナシ(内容・展開)、③オチ(サゲ)という3原則があると説明。「この人のここがうまい!」とプロの芸人の例を挙げて、それぞれ具体的なエピソードを聞かせてくれました。
続いては、教材としてお笑い番組をみんなで鑑賞。人気芸人たちのステージ映像を観ながら、それぞれのスタイルを分析。キャンさんの解説で「なるほど、だからおもしろいのか!」と笑いの理由が解き明かされていきました。
キャン先生のレクチャーで笑いの構造を学んだあとは、参加者が漫才に挑戦! 2人1組でコンビになり、相談しながら、用意された台本の穴開き部分にセリフを書きこんでいきます。台本が完成したら、発表タイム。登場BGMとスタンドマイクも準備され、本番のステージさながら。テンションがあがります。
結成したてのコンビ名を発表し、順番に披露されていく漫才に会場は爆笑。みんな上手!
キャンさんとすっとこどっこいの2人からは「ここがよかった!」という感想や、「もっとこうしたらよくなる」というアドバイスも。貴重なひとときでした。
最後は、「人(にん)が出る」という言葉も教えてくれました。「ネタはおもしろいけど、人が出ていないコントはある。おもしろい、おもしろくないではなく人が出るというのが大切」だと。
「自分がどういう人なのか。それを表現するためには、まずふだんの生活の中で素直に笑ったり怒ったりすること。感情を抑えないでほしい。喜怒哀楽を素直に表現することは、とても大事なことだと思います」。
最後のキャン先生の言葉がじーんと染みたワークショップでした。
続いては「前泊憲作編」ワークショップです。
参加者全員が表現者となり、クリエイターと「ブレインダイブ」して、ひとつの作品を作り上げる体験——ということですが、はたしてどういうことでしょう? 前泊さんが説明してくれます。
「まずは、ひとつの物語を題材に、みんなが感じることを自由に話し合います。主人公はどんな気持ちだったのか、どうしてこんなラストシーンになったのか。そんなふうに想像をふくらませ、精神を掘り起こすことで、みんなの脳に飛び込む。全員でブレインダイブします。そこでクリエイターとしての深層を引き出してみようというチャレンジですね。それから、後日みんなのイメージを実現化して撮影。1枚の写真として残します」
今回は、この「ブレインダイブ」をいつも前泊さんと一緒に行い、撮影を担当しているフォトグラファーの金城良考さんも参加。過去に同じ体験によって作り上げた作品「がちょう番の娘」の写真も見せてくれました。
さて、みんなの顔が見えるように輪になって着席したら、いよいよスタートです。
今日の題材となる物語は、前泊さんの故郷、宮古島に伝わる民話「マムヤの伝説」。ある美女に起きた悲劇の物語。
東平安名岬(ひがしへんなざき)には実際に「マムヤのお墓」があり、この民話と共に広く知れ渡っています。1枚の紙にまとめられたその物語を読み終わったあとは、一人一言ずつ感想を発表することに。
「美人ってかわいそう」
「主人公のマムヤは愛に飢えていた」
「名前が不思議。宇宙人だったのかも」
「人間の生々しさ、汚い部分が出ている」
「お願いが図々しい」
などなど、それぞれが感じた自由な言葉が飛び交います。前泊さんは「これだけみんな感想が違うっておもしろい!」と楽しそう。
中には、「マムヤは黒いロングヘアーでセンター分け」というビジュアルを連想した人も。これには「わかる!」とみんなも共感。おもしろいですね。
続いて「この物語が伝えたかったメッセージは、どんなことだと思う?」という議題に。参加者から飛び出したのは、こんな意見。
「権力者は信頼するな」
「男はクズ(笑)」
「よそから来た美人に手を出すと痛い目に遭う。村の女を大事にしなさい」
「時代は繰り返す」
フリースクール主宰の信藤三雄さんにも意見を求めると、こんな答えが。「何を言いたいのかぼんやりとしている。人の世は移ろいやすいってことかなぁ。なにしろこの物語にはオチがないよね。キャンさんにオチを作ってもらうといいんじゃない(笑)」
ひとつの物語をさまざまな視点でとらえること、自分の言葉で表現することのおもしろさ。大勢でディスカッションすることで見えてくる感性の違い。それが共有され少しずつリンクしていくビジョン。最終的に、参加者一人ひとりが思い描いた映像は、どんなものだったのでしょうか?
そして、前泊さんと金城さんが、みんなのイメージをまとめあげた結果とは?
後日、1枚の写真に映し出されるときが楽しみ。そんな刺激的なワークショップとなりました。
PHOTO/KEITA HIGA