フリースクールに出演したアーティストたちの印象的な言葉を紹介する「MESSAGE」コーナー。
初回は、第14回フリースクールに出演した写真家の仲程長治さんと、アートディレクターヒロ杉山さんのコトバをお届けします。
「カメラは武士でいう刀と一緒」
ワークショップで「カメラと友達になろう」と、カメラが単なる道具ではないことを教えてくれた長治さん。
「カメラをどう扱うか?」によって、その人の技が見えてくるといいます。たとえば、カメラの取り出し方、収め方。
「特別な瞬間を狙って一度のシャッターに賭けるときは、“撮ったの?”という速さで撮影してシュッと脇に収める。そんなとき、武士が鞘から刀を取り出し戻す一連の動作に似ているなと感じます。
刀の扱い方で剣の技がわかるように、カメラの扱い方で撮影の技がわかる。カメラの取り出し方、収め方は、とても重要な動きです」
被写体がいる場合は「その人の癖をつかむことが大事」とも。呼吸を合わせてリズムを共有したり、目をつぶって開ける瞬間を狙ったり。
リラックスしてもらうことも大切。とりわけ、沖縄のおじぃ、おばぁは恥ずかしがり屋なので、なかなか撮影が難しいとか。
「そんなときは、まずカメラを見せずに隠したまま、ゆんたく(おしゃべり)する。慣れてきたらゆっくりカメラを取り出してそばに置いてみる。徐々に徐々にカメラを向けてみる。今だ! と思うときに一瞬で撮る。
特別なときは、たった1枚だけ頂くという心構えで撮影しています」
「これが答えだという一瞬がある」
35歳のとき「スタイル」を放棄したというヒロ杉山さん。
「自分らしさ」という枠から飛び出し、「なにをやってもいいよ」と自分に言い聞かせる。
そこですべてを受信し、受け入れたことで、より一層アイデアが湧き出るようになったといいます。
一番の喜びは「これ以外はない! これが答えだ!」とピタッとくる一瞬。
デザインを続けていると、そんな瞬間が必ず舞い降りるのだそうです。
たとえば、人間の顔を抽象的な形で覆い隠したコラージュ作品「ABSTRACT PORTRAIT」の作業にとりかかっていたときのこと。
「当初の構想は、写真から人の顔を切り抜き、その顔をほかの写真に載せてコラージュするというものでした。ところが偶然、切り抜いた顔の形の抜け穴から、下に置いていた雑誌の誌面が覗いていた。
まさに“これだ!”と答えを見つけた瞬間。
そこで、切り抜かれた体のほうを使い、顔には抽象的な形を覆うデザインに。ゴミになるはずのものが生み出した偶然です。
ゴミが素材になることを意識してみる。既製概念ではないところで考える。それが新しいものを見つけるポイントだと気づかされた作品でした」